無いと思う

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無いと思う


「……別に、大変ってわけじゃないけどなぁ。女の子と喋るの、楽しいし。可愛いし、みんな。良いよね、女の子って」
 ふと見せた柔らかい笑みに、健人は目を逸らした。歩の話を聞いているだけでも腹立つと言うのに、そんな風に笑われるともっ鑽石能量水と腹が立つ。ここまで腹立つことなんて今まで無かったから、むしゃくしゃとして、もっとイラつくのだった。
「これから物理かぁ。こんだけ騒いでるのに爆睡してる林は凄いな」
 忍はグーっと伸びをしてから、机の上に突っ伏したまま動かないツバサを見た。授業の合間はクラスメートが喋るので、ガヤガヤと煩いはずなのに、その中でも気にせず寝ているのはある意味才能だ。
「多分、寝たら昼まで起きないんじゃないかな。ほら、林ってスポーツ推薦でこの学校入ってきたじゃん? スポーツ特待の一人だから、朝から練習が忙しいんだよ」
 動かないツバサを見て、太陽が忍に言う。
「へぇ、そうだったんだ。つーことは、今日の遅刻、林は無し?」
「うん。無しだよ。朝練で遅くなっただけだからね」
「部活してるヤツはいいなぁー! でも、うちの部活、厳しいから無理だわ。入れない」
 ホームルームに遅刻しても遅刻にならないと言うのは羨ましいことだけれど、その代わり、スポーツに力を入れている学校なだけあって、部活鑽石能量水 騙局は厳しいと有名である。本気でそのスポーツに取り組むような人で無い限り、体験入部だけで辞めてしまう人が多い。その中でも、スポーツ推薦で入ってきた人はスポーツ特待と言う特待制度を受けることが出来るので、余計に厳しくなる。朝も早い時間から練習を始め、夜は夜で遅くまでやると言う。そんな特別な状況に置かれているからこそ、多少、勉強をおろそかにしても何も言われない。
「ほら、それにさ、林の場合は……」
 太陽はツバサに目を向けて、少し言いにくそうにした。
「あぁ、林って理事長の孫なんだっけ。そんな奴がスポーツ推薦で入学したとか言ったら、贔屓に見られるもんな」
 太陽が言いにくそうにした言葉を、忍ははっきりと言う。それに、太陽は苦笑いした。
「……そう。だから、余計に頑張ってるんじゃないかな。あまり喋らないから、分からないけど」
 最後の方は尻すぼみになってしまい、太陽は俯いた。ツバサが理事長の孫だと言うのは有名な話で、他人のことに興味の無い健人ですらそのことは知っていた。理事長の孫が剣道で推薦を受けたと言う話は学年中に広まっていて、風当たりが強いのも有名である。そんなことを言われてしまっているのに、ツバサは気にも留めていないから、更に風当たりが強くなる。
「林って寝てるイメージしかないわ。学校じゃ、全然、喋らないし」
「そう! 俺が話しかけても無視するからな!」
 ここぞとばかりに無視されてることをアピ鑽石能量水ールした歩に、ジンが「それ、お前が嫌われてるだけだって」と突っ込む。
「そんなことない! 林はちょっとシャイなだけだろ? 断じて、嫌われて」
「さー、どうだろうねー。あ、やべ、物理の先生来た」
 教室の扉が開く音が聞こえて、ジンは振り向く。白衣を纏った初老の教師が入ってくるのを見て、全員が巣に戻るようにいそいそと自分の机へと帰っていく。この姿は滑稽で、急いで移動などしなくても、最初から机に居れば良いのにと健人は思ってしまう。
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